初期の腕時計

1902年にはオメガ社が腕時計を本格商品化し、軍人が腕に付けた腕時計を見ながら「これは欠かせない軍用装備だ」と言っている内容の広告を打っている。

しかし、当時の男性用腕時計は女性用懐中時計の竜頭位置を横に変えて革ベルトに固定したものであり、軍用としてはともかく、一般の男性民間層にはなかなか普及しなかった(後日、女性用懐中時計のムーブメント(時計内部の機械)のみの共用を経て、腕時計専用のケースとムーブメント開発が行われるようになった)。しかし依然として男性が携帯する時計は懐中時計が主流で、腕時計は正式な存在とは見なされていなかった。

紳士用腕時計として最初に大きな成功を収めたのはフランスのカルティエが開発した角形ケースのサントスで、1911年のことである。元々この腕時計はブラジル人の飛行家であるアルベルト・サントス・デュモンのために作られたものであった。サントス・デュモンは飛行船の操縦中、大きな動作を取らずに時間を確認できるよう、ルイ・カルティエに依頼して腕時計を制作させた。それまでの軍用時計と違い洗練された形態はパリの社交界で話題となり、市販されるに至った。「サントス」はスポーツ・ウォッチの古典となり、21世紀に入った現在でもカルティエの代表的な製品の一つとして市販されている。

第一次世界大戦は腕時計の普及を促す契機となり、男性の携帯する時計は懐中時計から腕時計へと完全に移行した。戦後には多くの懐中時計メーカーが腕時計の分野へ転身した。

第二次世界大戦以前からの主要な腕時計生産国としては、懐中時計の時代から大量生産技術が進展したアメリカ合衆国のほか、古くから時計産業が発達したスイス、イギリスなどがあげられる。後に英国のメーカーは市場から脱落した。アメリカのメーカーも1960年代以降に高級品メーカーが衰亡してブランド名のみの切り売りを行う事態となり、正確な意味で存続するメーカーは大衆向けブランドのタイメックスのみとなった。